はじめに
こんにちは。かめのひと歩きです!ラスベガスで開催中の AWS re:Inventに参加中。
今日はついに「Opening Keynote with Matt Garman(KEY001)」が行われましたね。
今回は、「AI × モダナイゼーション × クラウド基盤」の融合が明確に打ち出されました。新世代 AI モデル、多様なデータを使って自社専用モデルを作る仕組み、AI モデルを低コストで走らせる新しいサーバー群、そして古いコードや環境を一気に刷新するためのツール――それらが同時に揃ったことで、「とりあえずクラウドを使う」フェーズから、「AI/アプリ/運用をクラウドでまるごと設計する」フェーズに 本格的に移る スタートラインに立ったような印象を受けました。
この記事では、
・自分がセッションで実際に聞いた内容(Amazon Quick Suite、AWS Transform custom など)
・公式ブログで紹介されているその他の注目アップデートのざっくり概要
・EXPO の「Partner Experience Pavilion」に行ってみた感想
をまとめていきます。
1.始まる前の会場の雰囲気
Keynote が始まる前の会場は、朝からすでにお祭り前のような高揚感に包まれていました。
開始時間は 8 時。それなのに、私が到着した 6 時半の時点で、すでに目の前には長い列ができていて驚きました。
それだけこのセッションにかける思いが強い人が多いのだと感じ、こちらの期待も一気に高まりました。
7時半ごろに開場し、一気に人が中に入ると中ではDJがお出迎え。かっこいいです。
世界中から集まった参加者たちが、「今年の AWS はどこへ向かうのか」その答えを、今まさに聞こうとしている。そんな熱気が、会場の外にまで溢れていました。
2.Amazon Quick Suite:仕事の中に入ってくる“エージェント同僚”
Keynoteで、まず強く印象に残ったのがAmazon Quick Suite(以下 Quick) の存在です。
一言で表すなら、Quick は「社内外の情報を理解し、調べて、分析して、実際に手まで動かしてくれる“仕事の相棒”」という位置づけでした。社内ドキュメント、BI、CRM、チケット管理、ログ情報など、通常であればそれぞれ別の画面で確認している情報をまとめて横断し、その場でレポートを作成し、必要であれば チケット作成やメッセージ送信などのアクションまで実行 できる。「相談しながら、そのまま仕事が終わっていく」という世界観が、とてもリアルに描かれていました。
そして特に印象的だったのが、Amazon 社内の“税務チーム”での実運用の話です。このチームはエンジニアではなく、純粋な税務の専門職だけで構成されています。
彼らは Quick 上に専用エージェントを作り、
・社内の監査データ
・過去の税務判断の履歴
・インターネット上の税制改正情報
といった複数の情報を 自動で横断収集・統合 しています。新しい税制ルールが公開されると、Quick が自動で情報を整理し、「どの国で、どの税制が変わり、自社にどんな影響が出そうか」を 1つのダッシュボードに可視化 してくれるそうです。
しかもこの仕組みは、コードを書かずに、税務担当者自身が構築している という点が強調されていました。
その結果、チームは「調べる」作業から解放され、「判断」に集中できるようになったという言葉が、とても印象に残っています。
Quick は、単なるチャットAIではなく、本当に“仕事の流れそのもの”に入り込んできている存在なのだと実感しました。
3.AWS Transform custom:技術的負債に“ちゃんと終わりをつける”仕組み
もうひとつ、強く心に残ったのがAWS Transform custom です。
これは一言で言えば、「モダナイゼーション専用のコード変換エージェント」 です。
Java 8 から 17 への移行、古い AWS SDK から新しい SDK への移行、独自ライブラリから共通ライブラリへの置き換え、
x86 前提から Graviton 最適化 への変換など、「やればできるけど、量が多すぎてつらい」作業を、パターンとして学習させ、一気に自動変換する ための仕組みです。
Keynoteでは、ERP ベンダー QAD の事例が紹介されていました。もともと 1 案件あたり数週間〜1か月以上かかっていた変換作業が、AWS Transform を使うことで “3 日以内” に短縮された という話です。
さらに、Angular から React への移行、Excel に埋め込まれた DBA スクリプトから Python への変換、Bash から Rust への変換など、対象のコードの量が膨大だと、人力では心が折れそうな変換が、すでに実案件として運用され始めている という話も紹介されました。
ステージ上では、退役する古いサーバラックが派手に“爆破”される演出まであり、「技術的負債に、いつか向き合うのではなく、今ちゃんと終止符を打とう」という AWS からの強いメッセージを感じました。
Transform custom は、モダナイゼーションを“気合の作業”から、“実現可能な仕組み”に変える存在だと感じます。
4.すでに実稼働している“現実的すぎるエージェントたち”
今回のKeynoteが印象的だった理由のひとつは、「これは未来の話です」ではなく、「もう実際に動いています」という事例が、いくつも紹介されていた点でした。
あるチームでは、15 個のマイクロサービスにまたがるライブラリ更新 を、Kiro Autonomous Agent が 15 本の Pull Request として同時に自動生成 していました。しかも 1 本目の PR で指摘した内容が、残りの PR にも自動で反映される——「ちゃんと学習する同僚」 という表現がしっくりきます。
また、AWS Security Agent は、ソースコード以前の 設計書の段階でセキュリティ違反を検知し、止めてくれる存在として紹介されました。
クレジットカード情報の扱い方や個人情報の保存設計がルールに反すると、コードを書く前に止められる というのは、実務的に見てとても大きな価値だと感じます。
さらに、AWS DevOps Agent では、アラートが発生した瞬間に、「どの Lambda が、どの IAM 変更の影響で、どの CDK デプロイから壊れたか」という因果関係までを 人より先に特定して提示する というデモが行われていました。オンコール対応に追われる立場としては、「人が調査する前に、もう答えが出ている」 という世界は、かなり現実味を帯びてきたと感じます。
正直、情報量はかなり多く、まだ消化しきれていない部分もたくさんあります。
それでも、「この先、自分の仕事がどう変わっていきそうか」を具体的に想像できた 1 日だったのは間違いありません。
5.EXPO:Partner Experience Pavilion で感じた“現場のリアル”

午後は EXPO にも足を運び、the Partner Experience Pavilion を見てきました。
ここは、AWS 本体の展示というより、「AWS と一緒に現場を支えているパートナーたちの最前線」 を見る場所、という印象です。
クラウド運用、セキュリティ、データ分析、AI、業界特化ソリューションなど、それぞれのブースで「私たちはここが得意です」 という強みがとても分かりやすく打ち出されていました。
ちなみにブースはスタンプラリー形式になっており、各ブースで話を聞くとスタンプが押してもらえます。
集めた景品はAWSリュックやTシャツなど豪華!説明も聞けてアイテムももらえるなんて一石二鳥ですね!
また、生成 AI を組み込んだ運用ツールや業務アプリのデモも多く、AI が“試験導入の段階”から、“実務に組み込まれる段階”へ移ってきている ことを強く感じました。
7.明日(2025/12/03)の予定・注目ポイント
明日は少し毛色が変わって、AWS re:Invent 恒例の「5K レース」に参加予定です。
トレーニングウェアを持参して、参加者みんなで 5km を走るチャレンジイベント。レベルや経験は問わず、誰でも参加できるのが、このイベントのいいところです。コースは、マンダレイベイの Michelob ULTRA アリーナをスタート&ゴール地点にして、フランク・シナトラ・ドライブ沿いを走るルート。ラスベガスの街を、同じ re:Invent 参加者と一緒に走るという、ちょっと特別な体験になりそうで、今から少し緊張しつつも楽しみにしています。
走って、笑って、ゴールして、そのあとにまたセッションに戻る。そんな一日も、きっと re:Invent らしい思い出になるはずです。
また明日も、現地での出来事と空気感をそのままレポートしていきます。