kiroとは?
2025年7月、AWSからAIエージェントを搭載したIDE「Kiro」が発表されました。AWSのAIエージェントといえばAmazon Q developerがありますが、kiroにはある特徴があります。それは従来のバイブコーディングだけでなく、仕様駆動開発(Spec-driven development)が可能な点です。
仕様駆動開発とは、コードを書く前に詳細な仕様書を作成し、それに基づいて開発を進める手法です。要件定義・設計・実装・テストを段階的に進行させ、事前の仕様策定により、品質向上と一貫性確保を図ります。従来のバイブコーディングでは難しいとされていた、大規模プロジェクトなどに適しています。
SpecとHook
kiroには、仕様駆動開発を実現するために「Spec」と「Hook」の機能が提供されます。
Spec
プロンプトを入力することで要件定義や設計ドキュメント、タスクリストを生成してくれます。プロジェクトを始める段階では要件が曖昧なことも多いため、仕様書を書くことで作業の方向性を定め、要件を具体化していきます。この仕様書があることで、AIエージェントはより質の高いコードを生成できるようになります。
Hook
特定のイベントをトリガーとし、アクションを実行することができます。例えば、コミット時に機密情報が含まれていないかチェックしたり、一部のファイルを保存すると関連したファイルを更新したりすることが可能です。
インストール
公式サイトからダウンロードできます。2025/08現在、waitlistに登録する必要があります。
kiroを起動すると認証を求められます。Google、GitHub、AWS Builder ID、organization identityを使用可能です。私はAWS Builder IDでログインしました。
最初に言語設定を日本語に変更します。Kiroの機能自体は英語のままなので、寧ろ使いにくくなるかもしれません。設定はお好みで。
左下の歯車マークからコマンドパレットを開き「display」と入力し言語の設定画面を開きます。
「Configure Display Language」から日本語を選択します。
加えて、設定の項目から「zoom」と検索し、ズームレベルを調整することも可能です。
またプライバシー設定を確認することをオススメいたします。2025/08現在、無料版やプレビュー版はモデル学習に使用されることがあります。設定→アプリケーション→テレメトリから「Disabled」を選択することで無効にできます。
Spec
kiroの画面です。VibeモードとSpecモードを選択することができ、Vibeモードは従来のAmazon Q developerのように適宜チャットをしながらバイブコーディングを行えます。
kiroの特徴であるSpecモードを実際に行ってみました。せっかくなので以前ブロックチェーンの話をブログで紹介した際、軽く触れたイーサリアムウォレットを作成してみます。日本語及び、自然言語でプロンプトを入力します。
「イーサリアムウォレットを作成したい」と入力すると、まずrequirements.md(要件定義ファイル)を作成してくれます。
要件を確認し、修正ポイントがあれば自分で変更できます。
問題が無ければ「Move to design phase」を押し、設計(design)フェーズへと移ります。
design.mdが生成され、包括的な設計文書を確認できます。
こちらも確認し問題が無ければ タスクリストの生成に移ります。
「tasks.md」が生成されます。
タスクに問題が無ければ「Finalize task list」を押し、タスクの実行に取り掛かります。
完了したタスクは「Task completed」と表示され、実行中タスクは「Task in progress」と表示されます。
Hook
Hookについても触れておきたいと思います。特定のイベントをトリガーとし、アクションを設定できます。
「AGENT HOOKS +」を押します。
実行させたいフックを自然言語で入力します。今回は「ファイル保存時に機密情報や個人情報が含まれていないかチェックする」としました。
プロンプトに基づきフックが生成されます。
実際にファイルを更新し、保存してみました。
フックが実行され、セキュリティ分析結果を確認できます。赤枠内を確認すると個人情報、APIキー、シークレット、及びハードコードされた機密データは含まれていないことが確認できました。
その他の機能
Steering
プロジェクト固有のルールやコーディング規約をAIに永続的に記憶させることができます。これにより、プロジェクト全体で一貫性を維持しやすくなります。
MCP
MCPサーバーを連携できます。AWSサービスなどを使用するプロジェクトの場合、最新ドキュメントにアクセスでき、開発スピード・信頼性が向上します。
終わりに
競合となるIDEにはCursorやWindsurfがありますが、仕様駆動開発という面ではkiroのSpecモードが使いやすいです。プライベートで気軽に開発する分には、従来のバイブコーディングの方が気楽で良いかもしれませんが、大規模開発や実務には大きく役立ちそうだと感じました。
まだまだ私もkiroの表面的な部分しか触れられていませんが、とても魅力を感じました。今後kiroがどのような進化を遂げていくのか楽しみです。
ちなみにkiroの由来は、オバケのQ太郎からきていると噂で聞きましたが、どうなのでしょう…!それでは、また。