はじめに

こんにちは。かめのひと歩きです!ラスベガスで開催中の AWS re:Inventに参加中。
AWS re:Invent 2025 もいよいよ終盤となった Day4。

この日は、Amazon CTO・Dr. Werner Vogels による特別クロージングKeynoteと、re:Invent 最大級の公式イベント re:Play に参加しました。

最先端の技術だけでなく、「これからの開発者はどう生きていくのか」を深く考えさせられる一日になりました。

速報版として、まずはこの日の印象的な体験をまとめます。


1.A Special Closing Keynote with Dr. Werner Vogels

2025年の re:Invent を締めくくったのは、Amazon CTO・Dr. Werner Vogels によるクロージングKeynoteでした。このKeynoteは、単なる技術トレンドの話ではなく、AI時代における「開発者の在り方」そのものを問う内容でした。

「これは私にとって最後の re:Invent Keynoteです」

冒頭で Werner は、今回が re:Invent でKeynoteに登壇する最後の年であることを明かしました。

引退ではなく、「次の世代のエンジニアに、もっと多くの声を届けたい」という前向きな決断であることも語られ、会場全体が静かに引き締まったのが印象的でした。


1-1. AIは、私たちの仕事を奪うのか?

 

スタートは某タイムトラベル映画の「〇ックトゥザフューチャー」を思わせる「バックトゥザビギニング」の動画から始まりました。その動画では、今ある技術が今につながるまでをストーリー調で紹介されていました。動画の最後、「これは、我々が知っている開発の終わりなのか?」という質問に対し、Werner自身が「それともまた始まりなのだろうか?」と問いかけたのが印象的でした。
そして、会場全体がどこかで感じているであろう問いが投げかけられました。

「AIは、私たちの仕事を奪うのか?」

Werner の答えはとても明確でした。

  • 一部の作業は変わる

  • 一部のスキルは時代遅れになる

  • しかし 「開発者そのものが不要になることは絶対にない」

アセンブリ、Pascal、COBOL、構造化プログラミング、オブジェクト指向、モノリスから分散、オンプレからクラウドへ。

時代ごとにツールは変わってきましたが、「作る人」がいらなくなったことは一度もない

その言葉には、とても大きな安心感がありました。


1-2.私たちは「第二のルネサンス」の時代にいる

Werner は現代を 「第二のルネサンス」になぞらえていました。

ルネサンス期には、人々の好奇心を原動力に、科学・芸術・哲学が同時に大きく進化しました。その裏側には、鉛筆や印刷機、顕微鏡といった「道具」の進化がありました。

そして現在は、AI、クラウド、ロボティクス、宇宙開発といった分野が同時多発的に進化し、再び大きな変革の時代に入っています。その中心にいるのが、いまの私たち開発者=Renaissance Developer だと語られました。


1-3.Werner が語る「Renaissance Developer」の資質

Werner は、これからの開発者に必要な姿勢として、好奇心、システム思考、コミュニケーション、オーナーシップの大切さを語りました。
特に強く印象に残ったのは、「仕事は、ツールの責任ではない。あなたの責任だ」という言葉です。AIがどれだけ高度なコードを生成しても、そのコードを使い、判断し、責任を負うのは人間です。AIを言い訳にはできない。その覚悟を突きつけられるメッセージでした。


1-4.私が特に心に残った、海洋汚染とAIの話

このKeynoteの中で、私が特に印象に残った具体例が、海洋プラスチック汚染とAIの話でした。

一般的に、「アマゾン川は海洋汚染の大きな原因ではないか」と思われがちですが、Werner はここで 「その常識をAIがひっくり返した」事例を紹介していました。ドローン、AIカメラ、さらに GPSを取り付けたダミーのプラスチックごみ を使って、「プラスチックが川から海へどう流れていくのか」をAIで解析したところ、

海の深刻なプラスチック汚染の主な原因は、アマゾン川ではなかった

という事実が明らかになったそうです。

さらに解析の結果、世界中に約300万本ある川のうち、わずか1000本ほどの川が、海洋プラスチックの約80%の原因になっているということまで突き止められました。この結果によって、闇雲に海を掃除するのではなく、「どの川の、どの地点で対策を打つべきか」をAIの予測モデルによって、ピンポイントに特定できるようになったそうです。

この話を聞いて、AIは単なる便利な道具ではなく、人間の思い込みを越えて、本当に意味のある一手を見つけ出せる存在なのだと実感しました。テクノロジーが、実際の社会課題を確実に前に進めていく力を持っていることを、強く感じた瞬間でした。


1-5.AI時代の最大のリスクは「理解の空洞化」

一方で Werner は、AI時代の大きなリスクについても強く警鐘を鳴らしていました。AIによってコードは一瞬で生成できるようになりました。しかし、「なぜこの実装になっているのか」を理解しないまま使い続けると、重大な障害や事故につながる。

AIの ハルシネーション(自信満々の誤り) も含め、最終的に検証するのは必ず人間であるという点が、何度も繰り返し語られました。


1-6.このKeynoteを聞いて感じたこと

このKeynoteを通して感じたのは、AI時代は「エンジニアがいらなくなる時代」ではなく、「エンジニアがもっと人間らしく考える時代」になるのかもしれない、ということでした。コードを書くことそのものはAIが助けてくれる。でも、「何を作るのか」「それは本当に人の役に立つのか」「間違っていないか」を決めるのは、最後まで人間の役目です。不安よりも、「ちゃんと考えるエンジニアで居続けたい」という気持ちのほうが強く残るKeynoteでした。


2.re:Play(ACT009)〜 re:Invent 最大級の公式パーティ 〜


夜には、毎年恒例の re:Play が Las Vegas Festival Grounds で開催されました。

re:Play は re:Invent 最大級の公式エンターテインメントイベントで、ライブパフォーマンス、DJ、ローラースケート、スポーツチャレンジなど、会場全体がまさにお祭り空間になります。
Day4 まで全力で学び続けたあとに訪れるこの時間は、「学びきった人たちが、全力で遊ぶ」という re:Invent らしい空気を強く感じるひとときでした。私もたくさんの人と交流することができ、最終日のラストまで楽しむことができました!

3.まとめ

Day4 は、Werner Vogels による 「Renaissance Developer」という強いメッセージ、AI時代における 開発者の責任と覚悟、そして re:Invent らしい学びとお祭りの一体感、このすべてを一日で体験できた、非常に濃い一日でした。

技術だけでなく、「自分はこれから、どんなエンジニアでありたいのか」を改めて考える、大切な時間になりました。