日本のAWS業界の熱気

2025年6月25日、梅雨の雨風の中、幕張メッセで開催されたAWS Summit Japan 2025に参加してきました。あいにくの雨で、来場者が少ないかもしれないと予想していましたが、会場に足を踏み入れた瞬間から、大量の人がひしめき合う様子を見て、日本のAWS業界の熱気を強く感じることができました。

今回は様々なブースを巡り、特に「Partner Solution Expoの生成AIコースブースツアー」に参加した感想と、特に印象深かった「Dify」を実際に触ってみた感想について報告いたします。

Partner Solution Expo生成AIコースツアーでの発見

約2時間にわたる生成AIコースのツアーでは、AWS公式スタッフの方がガイドとして同行し、AI・機械学習分野の最前線で活躍する企業の技術を効率的に体験することができました。このツアーは事前申込制であり、限定された参加者で実施されるため、密度の濃い情報収集が可能でした。それぞれのブースで感じた驚きや発見を、順を追って振り返ってみます。

Anthropic:Claude Codeの魔法のような体験

最初に訪れたAnthropicのブースでは、Claude Code※1の実力を目の当たりにしました。Claude Codeは、ターミナル上で動作するエージェンティックなコーディングツールで、開発者がコードベース全体を理解し、自然言語コマンドを通じてより高速なコーディングを支援するツールです。特に驚かされたのは、その圧倒的なコーディング能力と自立性です。

デモンストレーションでは、Figmaで作成したサイトのモックから、瞬時にコードを生成して、魅力的なコーヒーショップのサイトを作成していました。Q&Aの5分間で完成してしまい、まさに魔法のような体験でした。コーディングがエンジニアの作業から、AIエージェントの作業に移り変わったという事実を目の当たりにし、今後エンジニアはより高次の価値創造に注力する必要があると深く感じました。

※1 Claude Code:Anthropic社が開発したコマンドライン型のコーディングアシスタント。ファイル編集、バグ修正、テスト実行、Git操作などを自然言語で指示できる。

Advanced Media(AmiVoice):日本語特化の音声技術

Advanced Mediaのブースでは、AmiVoiceの音声認識技術のデモを体験しました。その認識精度の高さに感動しました。特に印象的だったのは、方言や専門用語にも対応しているという点です。

担当者の方によると、「日本語の性能に特化しており、医薬品や金融関係などの日本語専門用語も高精度で認識できる」とのことでした。確かに、その他の音声認識技術も存在しますが、日本語に特化しているという点は、AmiVoiceの強みだと感じました。

GitLab:開発プロセス全体のAI支援

GitLab DuoとAmazon Q Developerの連携デモを見ていると、単なるコード生成ツールを超えた、開発プロセス全体の最適化の可能性を感じました。

特に興味深かったのは、セキュリティスキャンやテストの自動化が、開発フローの中で自然に行われる様子でした。「開発者がコードを書くことに集中できる環境を作る」という担当者の説明からは、開発体験の向上に全力で取り組んでいる姿勢を感じました。Amazon Bedrockとのシームレスな連携も、AWSエコシステムの強みを活かした優れたソリューションでした。

Lang Genius(Dify):オープンソースが切り開くAIアプリ開発の民主化

Difyのブースでは、オープンソースの力を改めて実感しました。Difyはノーコードで生成AIを活用したチャットボットや自動化アプリの開発ができるプラットフォームです。GUIベースでAIアプリを開発している様子を見て、良い意味で「簡単に開発できる」という印象を持ちました。従来なら1か月以上かかっていた開発が、Difyを使えば数時間で可能になるという説明もあり、「よくあるユースケースであれば、Difyで十分対応できる」と思いました。

またエンタープライズ向けにも力を入れており、「オープンソース=企業利用には不安」という従来の概念を覆す、SOC2やISO 27001といったエンタープライズグレードの認証取得への取り組みも素晴らしいと感じました。

Mamezou:スポーツ×AIという意外な組み合わせの面白さ

Mamezouのブースで最も驚いたのは、「スポーツ×AI」という一見意外な組み合わせでした。ジュビロ磐田アカデミーとの共同プロジェクトで、コーチの知見をAIエージェントに蓄積・活用するという取り組みを知り、AIの応用範囲の広さを改めて実感しました。

また、ノウハウ継承という課題は、スポーツ業界だけでなく、どの業界にも共通する重要なテーマです。この事例を通じて、AIが単なる技術ツールではなく、人と人との知識伝承を支援する「パートナー」のような存在になりつつあることを感じました。

Difyを実際に触ってみた体験

Difyは、以前から名前だけは知っていましたが、実際にデモを見るのは今回が初めてでした。気になったので、実際に触ってみることにしました。

OpenAIやGeminiが提供している「Deep Research」のような機能を実現できないかと考え、作成してみました。

アーキテクチャ

以下のようなアーキテクチャを設計しました:

  1. エージェント0が、ユーザからクエリを受け取る
  2. クエリを5つに分解し、変数に格納する
  3. エージェント1〜エージェント5がパラレルで、リサーチを実行する
  4. エージェント6が、情報を集約してユーザに提供する

動作確認

以下のプロンプトを投げてみました。

いい感じに動いてくれました。

実際に動かしてみたところ、期待通りの動作を確認できました。本家Deep Researchに課金したくない方は、Difyでセルフホストするのも良い選択肢かもしれません。

使用感と所感

かなりいいのでは?っと思いました!

私が触った経験のあるAI開発フレームワークは、「Mastra」、「Langchain」ですが、Difyはノーコードツールということで、両者に比べるとできることが少ないのではないかと懸念していました。

しかし、良い意味で期待を裏切ってくれました。AIエージェントが使える上、ワークフローも組みやすく、プラグインを利用することで、簡単にMCPやツールが使えるということで、AIアプリ開発において、大部分のユースケースをカバーできると思いました。

また、ビジュアルでワークフローを定義できることから、場合によっては、「Mastra」、「Langchain」よりも適用場面があると思いました。そのため、最終的にLangchainで開発するとしても、初期段階でDifyを使って色々確かめるという使い方は有効だと感じました。

まとめ

AWS Summit Japan 2025は、最新のテクノロジーに触れ、業界の熱気を体感できる、非常に刺激的なイベントでした。特に、Partner Solution ExpoのブースツアーはAWS公式スタッフのガイド付きで効率的に情報収集ができ、参加者にとって非常に価値のある体験だと感じました。まだ参加したことがない方には、ぜひ来年の参加をお勧めします。

Difyを実際に触ってみて、今後も積極的に活用していきたいと思いました。また、「Langchain」との使い分けについても、今後探究していきたいと考えています。